100万回の祈りをキミに

・近づく距離





セミが姿を消して木々が紅色に色づき始めた季節。学校は来週の文化祭の準備で慌ただしかった。


「あれガムテープ足りないんだけど」

「段ボール余ってたらこっちにちょうだい」


うちのクラスの出し物はお化け屋敷に決まった。

人気の出し物だし他のクラスも候補にしてたから、なんでも壮絶なジャンケン大会でうちのクラスが勝ち取ったらしい。

全部運を使い果たしたーって夏井が騒いでたけど、本当にイベントごとになるとアイツは燃える。


「ねぇ手が開いてる人いる?体育倉庫からロープと三角コーン借りてきてほしいんだけど」

みんながせっせと仕事をしている中、私はなにかをやっているふりだけしてたけど……明らかに私に言ってる気がする。

その視線に耐えられなくなって、仕方なく重い腰を上げた。


「……私がいくよ」

「えー本当?藍沢さんありがとう」


こんなイベントごとなんてなくなればいいのに。

そんなことを思いながら、渋々体育倉庫へと向かった。

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