100万回の祈りをキミに
亜紀はぜんぜん威張らないし、むしろ敬語だって使うなって言うぐらいなのになんで同じ3年生でこうも違うのかな。
「部活は……」
「もう2学期も後半だし3年は引退だよ。次は受験に向けて頑張らないと」
そうだよね。1年の私には遠い世界だけど3年生は冬に高校受験を控えている。
陸上部を辞めてから亜紀のサッカーを見ることはなかったから、ちゃんと見ておけば良かった……なんて今さら後悔。
「志望校とか決まってるの?」
ずっと私のことばかり気にしてもらって、亜紀自身のことについて聞いたことはなかったけど。
「この前何校か見学に行ってさ。悩んだけど行きたい高校は決まったよ」
なんだか亜紀がより大人に見えた。
「……ど、どこ?」
聞いてもいいかな、聞いちゃダメかなと葛藤しつつ、小さい声で質問した。
「誠凌高校」
たしか誠凌ってここからバスで15分くらいのところにある高校で。歴史は古いけど数年前に外観の工事をしてすごくキレイな学校だったはず。
制服も緑のブレザーで可愛いし、偏差値の壁もそんなに厳しくないから倍率とか高そうだけど。
「学力っていうより3年間通いたいと思える高校を選ぼうって決めててさ。校門をくぐった瞬間、ここだ!って直感で思ったんだよね」
あんまり考えたことなかったけど、春になれば亜紀は卒業しちゃうんだなぁ……。ちょっと寂しい。
そしたら私たちの関係はどうなるんだろう。
もう校内で会うことはないし、それこそ亜紀は〝先輩だった人〟になる。高校生になったら色々な出逢いがあるし、可愛い子もたくさんいるだろうし。
私にかまってくれる時間なんてないだろうな……。