食わずぎらいがなおったら。
6月
真奈の相談
いい加減蒸し暑くなってきた6月頭、フロアのエアコン調整具合が微妙で、寒かったり暑かったり最悪な1日だった。
だんだん忙しくなってきて、風邪ひいてる場合じゃないから、気をつけないと。
夕方になって、真奈が何やら改まって声をかけてきた。
「香さん、相談したいことがあるんですけど」
真奈は真面目でよくできる子だし、仕事で深刻な相談されるような覚えはないけど。
私が気づかないだけで、何かに悩んでるなら聞いてあげないとな。
辞めるとかじゃないよね?
時々1年ぐらいで辞めちゃう子は、人知れず悩んでたりするらしい。
こうやって面と向かって相談して来る場合は、まぁ大丈夫なんだろうけど。
一応会社の人と鉢合わせしなさそうなところがいいというので、駅裏の坂を上ったところにあるダイニングバーに行くことにした。
特に開発部の連中は、こういうところには来ないはず。
「単刀直入に聞きますけど」
オーダーが終わるや否や、真奈が真剣な顔で聞いてきた。こちらもつい背を伸ばして聞く姿勢を取る。
「平内さんと付き合ってるって本当ですか」
あー、そっちの相談か。ちょっと脱力する。
真奈は若くてかわいいけどおとなしめの子で、ああいうのに惹かれるのは意外かも。
そういえば、平内ともどうとか言われたことあるよね、私。別に一緒にいること少ないと思うけど。
「ただの噂でしょ。家が近いから帰りに一緒になったりするだけだよ」
はい、解決。
この後きっと、平内には彼女がいるかとかどういうタイプが好きなのかとかが始まるよね。
ごめんね、知らないよ、そういうの。同期の子に聞いたほうがいいかも。
あ、彼女はいないってこないだ言ってたか。