食わずぎらいがなおったら。
健太の手をつなぎ、平内のちょっと後ろを歩いて着いて行った。もうイライラしてないのかなぁ。
お世話になっといてなんだけど、なんなのかな今日は。機嫌が直る理由もわからないし。
健太には聞こえないくらいの小さい声で話しかけられる。
「え?何?」
聞き取れない。
ちょっと振り向いて歩調を緩め、耳元に口を寄せてくる。ドキドキするんですけど、その声。
「さっきごめん。無視した」
「…ああ。うん。ちょっと傷ついた」
「今度は子連れバツイチかよ、と思って」
え?どういう意味?
「男と喋ってた」
「は?」
「週末男が泊まりに来るらしいよ、って言われてたよ。電話来てたって」
電話?は?お姉ちゃんからの?あんなのまで聞かれて噂たてられてるのか。
ほんとにみんな暇なんだか何なんだか…
うんざりしつつ呆れていたら、平内が顔を覗き込んで、さすがに気まずそうな顔をした。
「よく考えたら、そんなの聞こえるところで話すほど馬鹿じゃないし、泊まるのに子連れとか意味わかんないよな」
「だね」
それから顔をそらして、また言った。
「さっきの子、なんでもないから」
そこまでボソボソと言ってから、突然健太に振り返って明るい声を出した。
「健太、射的やったことあんの?」
「パパがやってたから、できる」
「コツがあるんだよ。教えてやろうか」
「ほんと?」