食わずぎらいがなおったら。
健太と射的をやって。焼きそばとその他もろもろ買って、3人で食べた。

友達ほっといていいのかなと思いつつ、平内が何も言わないから、甘えた。

楽しくて。

会社じゃなくて、健太もいて、普通に友達みたいに遊んで、食べて。




なんだろうこの3人、さすがに親子には見えないよね。

「何笑ってんの」

「え、どう見えるかなって。平内、私の弟に見えるかな。健太の父親には若すぎるでしょ?」

「そんなことないよ。健太、香ちゃんと手つなげ」

健太に声を掛けると、平内は私の反対側の手を取った。うわ、指を絡めてくる。



「これで親子っぽいだろ」

偉そうに言ってるけど、違うよ、バカ。3人で手をつなぐ親子は、普通子どもが真ん中なんだよ。

「わかってないな」

口調を真似て言う。でも笑っちゃって失敗。

「どっちが」

呆れたように言われる。そっちがだよ?この場合。別に説明する気もないけどね。




健太がぱっと私の手を離し、回り込んで平内の腕に飛びついた。

「タケル、あしたアスレチックいっしょに行こうよ」

すっかり懐いて誘っている。

「俺明日起きれなそう」

苦しそうに平内が言う。



「あれってあそこでずっと飲むの?」

「ああなったらもう、どこまでも飲む。終わっても誰かのうちで飲むんだよ」

「いいね、地元って感じする」

「あいつら底なしだからなぁ」

楽しそうだなぁ、そういうの。




会社帰りと違って、今日はちょっと素の平内を見た気がする。

割と短気で、友達と仲良くて、子ども好き。たぶん普通に手も早い。手をつなぐのなんて、たぶんなんでもないわけだ、ほんとに。




なんとなくそのまま手をつないだまま、健太は周りをちょろちょろ行ったり来たりしたまま。

バス停まで送ってもらった。

がんばって飲んでねーとよくわからない声をかけて、バスに乗ってうちに帰る。



あの子もなんでもないのか、そっか。

なんでか怖いくらい、気分が上がって。




健太と歌いながら夜道を帰った。
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