食わずぎらいがなおったら。
目が覚めると、すっかり明るい。
当たり前だけど、隣に平内の寝顔がある。寝てるとかっこいいというよりやっぱりかわいいな、やっぱり。年下め。
起きないでね、と願いながらそっと抜け出してシャワーを浴びて着替える。
そっと戻って寝室を覗くと、まだ寝てる。散らばってた服を枕元に置いて、そろそろ起こさないとと考える。
もう7時半。
今日は平日だ。
「平内、起きて。会社だよ」
普通に聞こえるように、緊張してるとばれないように、揺さぶって起こす。
「んー、まだ平気」
「なわけないでしょ。帰って着替えたりしないと」
「1日くらい同じでもいいよ」
完全にリラックスだ。慣れてるんだろうなあ、こんなこと。
悪いけど私はね、こんな風に流れで男の人泊めたことないんだよ。
「無理。私の自転車使っていいから。ねえ、起きて。お願い」
寝起きの悪い平内を無理やり起こして、シャワーを浴びさせ。簡単な朝食を食べさせて、自転車置場に連れて行った。
20インチの赤い自転車を引き出して渡す。鍵は後で返してくれたらいいからって。
「これ、職質されんじゃないかな。明らかに窃盗でしょ」
「大丈夫だってば。朝だから、そんなのいないよ」
「捕まったら助けに来てよ」
バカなことを言ってる背中を押すと、行き急ぐ瞬間に、私の頭を引き寄せてふわっと軽いキスをして、いってきます、と走り去った。
まずい、猛烈にドキドキした。
どうしよう。2時間後には、会社で会っちゃう。
同じフロアだよ。どうすんの、私。