食わずぎらいがなおったら。
それから、平内は会社でも全く話しかけてこなくなった。
私達の席には寄ってくので、傍目には何も変わらないように見えるはず。
でも、話しかけてるのは真奈にで、私じゃない。
真奈は、嬉しいような困ったような微妙な反応をしてる。2人がどうなってるのかは、よくわからない。
本当にバカだ、私。今さら。
平内が優しいのを、どこか当然に思ってた。みんなにやってるんでしょとか、思ってた。
チームも違うのに、いつも気にして声をかけてくれてたのに。
なんでも食うとか年下とか社内とか、そんなことばかり気にして、なんにも見てなかった。
平内のことも、自分の気持ちも。
真奈はたぶん、私を避けてる。
平内は言ってないと思うけど、急に疎遠になった私達の様子に気づくものはあるだろう。
真奈も食っとけ、なんて思ってない。でも、まっすぐに片思いをしてる真奈が自分に重なるのも嘘じゃない。
1度だけでも応えて欲しかった。
嫌いじゃないけど、その気はない。
あんな風に宙ぶらりんにされたあの頃の自分を、どうしても思い出す。
真奈のそばで、平内と付き合うなんてできない。
そもそも平内にそういうつもりがあったかどうかも、聞いてない。今何考えてるかはもっとわからない。
私に怒ってる。それだけはわかる。
「真奈、仕様チェック大丈夫だよね?」
「はい。今確認中です」
「大変だけど、もうちょっとだからよろしくね」
仕事上、真奈に指示を出したりチェックしたりする必要はある。でも最小限になるようにしてる。
真奈に振る仕事を減らして、なるべく自分でやる。残業は増えるけど、忙しいほうが気が楽。
今佳境のプロジェクトが終われば、真奈は私の下からまた別の仕事に移る。
もう少し。
今は、何も考えたくない。