食わずぎらいがなおったら。
翌朝、半田さんから電話があった。

「田代部長から聞いてるから、本当に休んでね」

といつもののんびりした声が言う。

「大丈夫、段取りつけたから、今日なんとかしとくから。たまには米沢さんにいいとこ見せたいって、昨日からみんな頑張ってるよー、明日褒めてやってね」

私が負担に思わないようにと、そんなのんきなことを言ってくれる。

でも本当にそうなのかも。みんな、見ててくれてたのかも。



コーヒーを入れて、リビングでのんびりする。

1人には広すぎる部屋。

ずっと持て余してた。

内緒じゃないって言ったけど、付き合ってた彼にも言わなかったのにね、結局。嫌がられそうな気がしてた、男の人に言ったら。



面白いって言ってたね、笑ってた。

なんであの日、話したんだろう。聞いてくれると思った?…来て欲しいと思ってた?




好きなんだよね、私。

たぶん、結構前から。

年下だし、向こうはからかってるんだろうし、って見ないようにしてたけど。

好き。




今更なぁ。

どうしたらいいのかな、わからない。






まぁいいか。

できないことはできなくていいって言われたんだから。

なるようになれ。




あーあ。仕事のことを言われたのに。結局考えてるのは恋愛か。ダメな奴だ。



でも、それでもいいんだって。みんなで仕事やっといてくれるんだって。

童話に出てくる靴屋の小人さんみたいだ。

開発のみんなが小人になってテーブルの上で働いてる姿を想像して、1人で吹き出しそうになり、慌ててマグカップを支え直した。



真奈は今日大丈夫かな、とふと心配になり。

きっと平内とか誰かがフォローしてくれてるな、と思い直す。




食うとか食わないとか、そんなんじゃなくて。

周りに愛されてるのは、私だけじゃない。
< 49 / 85 >

この作品をシェア

pagetop