食わずぎらいがなおったら。

朝の開発部フロアは、人が少ない。

夜型人間達はコアタイムギリギリの10時にやってくる。

9時についたら、数人しかいなかった。昨日飲み会だったから特にひどい。




「おはようございます、香さん」

「早いの珍しいですね」

立ち話中の平内と真奈に声をかけられた。

「みんな来ないうちにやっちゃいたいことあって」

と言っても、隣の席の真奈も早いんだったな、忘れてた。



真奈は去年開発に配属された2年目の子で、適性を見るためと言っていろんなプロジェクトに回されてる。

私は開発内でいくつかのグループ横断で仕事を手伝っているから、なんとなく関わることがよくあり。

開発案件が立て込んできたので、私の隣に来てしばらく仕事を手伝ってもらうことになった。

経験は浅いけど、いくつかプロジェクト見てるからか飲み込みがいい子だと思う。



「じゃあ私、コーヒー入れてきます。平内さんの分も!」

真奈がパタパタと走り去った。いい子だなあ。

23才?私あの頃あんなにかわいかったかな。



「平内も早いの珍しいね」

「友達に捕まって、あのあと帰れなくてそのまま来た」

友達、ね。女の子かな。あくびをしている。

そう言えば、同じ服だね。




「平内、せめて仕事中は敬語って言わなかった?」

「まだ雑談中」

「やることあるって言ってるでしょ」

「はいはい。お仕事頑張ってくださいね」

投げやりな口調だけど、声が笑ってる。

仕事しなさい、と眠気覚ましガムをパッケージごと渡して追い払った。

ひらひら手を振って、少し離れた席に戻っていく。




なんでこんなに舐められてるんだろう。入社当初はもっと可愛げあったのに。

先輩らしい仕事できてないからかな、落ち込むなぁ。



「やることやるしかないか」

椅子に座って伸びをして、パソコンに向かう。

バージョンアップが近い案件がいくつかあって、仕様変更にバグ管理にと、細かい管理業務が多いんだ。



あと数ヶ月、恋愛は置いといて仕事に集中しようかな。
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