食わずぎらいがなおったら。
「やっぱり香、なんか違うよ?」

リサが訝しげに言う。

「そう?最近変わったって会社でも言われるんだよね、自分ではわかんないんだけど」

「柔らかくなった」

「そう言われるの。どういうこと?」

「無理してないって言うか」

まあ会社ではね。仕事頑張りすぎないようになったからね、無理してないけど。リサにもそう言われるって不思議。



うーん、とリサが考え込む。

がんばれ妊婦。何かお告げとかしてよ。



「前に1回会った人だよね?」

「ランチ来てくれた時ね」

6月だったかな。リサが武田に挨拶に行って、そのときにいたけど、リサとは話してないよね。

「香がね、楽しそうって思ったの、あの時。仲良いんだなって。話聞いてても思うんだ、香をうまく甘えさせてくれる人なのかなって」

「ええ?」

「今までの人ってね、香が甘えてても、相手の人が喜ぶからそう振舞ってるって気がしたの。今回はなんかね、香が自然体って気がする」

そうなの?それって、リサと先輩が付き合い始めた時に私が思ったのと、同じなんだけど。

「それも妊婦の勘?」

「かなぁ。そうかも」

でもなぁ。相手が違うなぁ。先輩みたいに、あんなわかりやすそうな感じの相手じゃない。

なんでもわかってて落ち着いてそうかと思えば、すぐ怒って子供っぽいところもある。優しいけど、何考えてるかわかんない。

私が自然体?もともとお互い恋愛対象じゃなくて気を遣ったりしてなかったから?それなら武田だってそうだけど。

平内は、誘ってくれるし、送ってくれるし、女の子扱いしてくれてたなって今は思う。

私、甘えてた?そういう自覚ないけど。



「上手くいくといいね」

リサがふんわりと笑う。

「ありがと」

心からの笑顔で応じた。ありがと、リサ。元気でたよ。



相変わらず幸せそうなリサに会っても、卑屈に焦ることがなくなったのは感じる。

それだけでも、変わったのかもね私、何かが。


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