食わずぎらいがなおったら。

2人飲み

彼がいるときは大抵金曜に会ってたけど、最近は特に予定なし。

土日ずっとうちにいると、なんだか滅入るので週末は予定を入れてる。

でも金曜は仕事もあるから、別に何もなくてもいいかなって。



「香さん、先週結局俺と飲んでないよね」

帰り際、平内が声をかけてきた。

そうだけど。それ自分のせいでしょう。



ああいう時、平内は全然寄ってこない。

あの場でしか会わないメンバーを優先するんだよね。

人気者だからね、イケメンくん。



平内って自然と気配りできちゃうからな。

見えている人、と私は呼んでいる。

プロジェクトのサポートに入ってるとよくわかるけど、やること早いし、気は回せるし、どこからかいろいろ情報取ってくる。



私は姉御肌を気取ってるけど、ほんとは全然見えてない。

空気も立場も読めてない。

年を取って経験を積み、わかってきたことでなんとか回しているだけ。




上司にため息をつかれた理由が、よくわからないときがある。

社内で変な噂をしょっちゅう立てられる。

人より多少できる仕事と、全然できない仕事がある。



今は得意なところでカバーしているけど、たぶんそろそろ限界だ。






「一緒に帰ろ」

一方のこいつは、色々考えてるに違いないのに、見た感じ無邪気。

ずるいなぁ。

余裕がないってこともばれてるのかなぁ平内に。


考えながら、誘いに乗って歩き始めた。


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