食わずぎらいがなおったら。
「腹減った」
「どうしたの? 朝食べてこなかった?」
運転しながらまだ言うか。まだお昼ちょうどぐらいだし、そんなに言うほどお腹減る?
「最近食欲なくてさ」
「どっちなの?」
いいかげんイライラして言った。こっちは色々考えてるのに、食欲の話とか。
はぐらかすならもっと上手くやってよ、できるでしょ、そのくらい。
「前はなんでも好き嫌い言わず食えたんだけど。腹減ってても、好きなもんしか食いたくないんだよ。前に1回食ったのがいいんだよね。毎日それだけでいいかなと思ってる」
え、何それ。何の話。
運転する横顔を見る。今絶対、バカみたいな顔してる、私。
「好き嫌いの話だよ?」
横目でからかうように平内が笑う。
「今日食っていい?」
頰が熱くなって真っ赤になったのが自分でもわかった。
「香さんちで食おう」
赤信号で停まったところで、楽しそうにこっちを見て囁いてくる。
ずるい、さっきはため息ついたくせに。
「やばい、その顔かわいい」
調子に乗ってる、こいつ。悔しい、けど絶対分が悪い。
「やばい、ほんとに腹減ってきた。俺朝からなんも食ってない」
「腹減ったって言い過ぎだからだよ」
「しょうがないだろ、いつから我慢してると思ってんだよ」
だから、変なこと言わないでよ!
結局コンビニで食べ物を買って、車の中で食べながら帰った。
食べさせてとか調子に乗ってくる平内に餌付けした。まだ腹減ってるとか、また妙な発言をして1人で喜んでる。
子供か。もう。