食わずぎらいがなおったら。
29になって半年経った。
仕事も恋も行き詰まってたあの時、成長したいと願ったけど、結局失敗してばかりだった。
頑張った仕事は空回りして、取り上げられた。
恋愛は、怒らせたあげく、自分では何もできなかった。
でも、なんでか今、幸せだ。
特に私は変わってない。
ただ、気づいただけ。
ちゃんと愛されてるってことに。
私に見えるところで、見えないところで。
気づかなくても、わからなくても。
何かがごっそり欠けたままでも。
幸せになってもいい。
どうやら、そういうことらしい。
「他は食べないって言ってくれたこと、心強く思ってるよ」
結局日曜は健太とアスレチックで遊んで、夜になって疲れたとソファでゴロゴロしてるタケルに、立ったまま声をかけた。
目が合って、勢いよく起き上がったと思ったら手を引かれた。うわ。疲れてたんじゃないの。
よろけたところを抱きしめられ、そのまま押し倒される。
「久しぶりにこっちで食っていい?」
私の腕を押さえつけて楽しそうに言い、覆いかぶさってきた。
返事もさせないで長くキスをした後ぎゅっと抱きしめて、大好きな声が深く耳元で囁やいた。
「香だけでいいよ、ずっと」
THE END