せめて、もう一度だけ
諒に電話すると、ワンコールですぐに出た。


スピーカーにしたから、遼くんにも会話は聞こえる。


「もしもし美希子、いまどこにいるんだ?」


「いま、東京にいる」


遼くんの左手を握りしめながら答えた。


「離婚届置いて東京へ行くって、どういうことだよ。


あの男と一緒なのか?」


「そう、一緒にいる。


田辺くんっていうの、私は田辺くんと一緒に生きていきたい」


「本気なんだな、でも離婚は絶対にしないから」


「好きじゃない人と、これからずっと一緒に暮らせっていうの?」


「おなかの子どもは、俺の子どもだろ。


電話じゃ話にならないから、東京着いたら連絡する」


電話は一方的に切れてしまった。


「今から来るつもりかな、かなり遅い時間になるけど」


「いずれは直接話さなきゃいけないんだから、早い方がいいだろ」


遼くんは、落ち着いて見えた。



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