せめて、もう一度だけ
諒から連絡がくるまで、遼くんとたくさん話した。


「俺、美希子が会社辞めたって聞いて、俺じゃなくてダンナを選んだのかって、めっちゃショックだった。


やっぱ俺じゃ、頼りにならないんだろうなって。


すぐに電話したかったけど、声を聞いたら奪いたくなっちまうって思って、我慢した。


いつか、迎えに行けるまで、頑張って稼ごうって。


そしたら、ミキが来てくれて。


俺、夢みてるのかと思った」


「私は、遼くんだけにツラい想いさせちゃうかもしれないけど、仙台へ行くことが一番丸くおさまるって思った。


だけど、自分にも嘘をついて、夫以外は誰も知り合いがいない仙台で暮らしていくのは、すごくきつかった。


このままじゃ、赤ちゃんがかわいそうって思って。


今朝掃除してたら、東京にいる時に書いた離婚届が出てきて。


離婚届を書いた時の気持ちを思い出して、そのまま家を出てきちゃった」


遼くんは、いとおしそうに私のおなかをそっとなでた。


「よく、がんばったな。


だけど、これからは無理すんなよ。


食事もちゃんととれよ、また貧血で倒れたら困るだろ」


「はい」


遼くんは年下なのに、大事な時にすごく頼りになる。



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