せめて、もう一度だけ
「ミキ、どうだった?」


「うん、今回も異常ないって」


「そっか、よかったな。


寒いから、気をつけて帰れよ」


「うん、遼も仕事がんばって」




仙台へ離婚届をおいて出てきた日。


仙台から東京まで追いかけてきた松永くんが、遼をなぐった日。


あの日は、まさかこんなおだやかな毎日が送れるとは思ってなかった。




次の日の夜、松永くんはお義母さんと一緒に訪ねてきた。


前日と同じようなやりとりを繰り返していた私たちの話を黙って聞いていたお義母さんは、


「諒、もう美希子さんのことはあきらめなさい。


他の男性を好きになる嫁なんて、本当にひどいと思うけど、両親が不仲で一番かわいそうなのは、子どもよ。


あなたたちは、もう寄り添っていけそうにないでしょう。


子どもの将来を考えて、離婚しなさい」





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