せめて、もう一度だけ
3月。


いつ産まれてもいいよ、と先生に言われたのが昨日で。


今朝「おしるし」があったから、たまたま休みだった遼と一緒に、うちでおとなしくしてた。


何事もなく夜になり、今日は産まれないかなーとのんきに構えていたら、少しずつキリキリおなかが痛くなりはじめた。


「り、遼・・・なんか、おなか痛いかも」


「マジか、お、落ち着け、病院に電話するか?」


「う、うん、これが陣痛なのかな・・・間隔を測ってみるから」


測ってみたら、7分くらいだった。


病院へ電話して、遼に車で送ってもらって、着いたとたん緊張の糸が切れたのか、痛くて痛くて我慢できなかった。


内診を受けたら、もうすぐ産まれそうだから、このまま入院することになった。


遼はその間ずっと付き添ってくれていた。


たまにくる我慢できない痛みに耐えるのに必死で、遼の手を力いっぱい握った。


「ミキがんばれ、もう少しだからな」


遼は、励ましながら水を飲ませてくれたり、腰をさすってくれたりした。




記憶が飛びそうな痛みに耐えて、普段しない体勢で力を入れたせいで筋肉痛になりながら。


「元気な女の子ですよー」


産まれた瞬間、しあわせな気持ちでいっぱいになった。


遼と私の、新しい家族。


「ミキ、よくがんばったな、おめでとう」




わたしたちは、もう一度ここから、はじめるんだ。


産まれたばかりの赤ちゃんが、しあわせを運んできてくれたんだね。


少し目がうるんでいる遼の手を、ぎゅっと握った。





○o。. fin . 。o○





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