せめて、もう一度だけ
お茶してから動物園をあとにして、歩いた先のイタリアンに入った。


13時を過ぎていたから、すんなり座れた。


ここもまた、似合わないお店で。


もしかしたら、いろいろ調べてくれたのかもしれないとさえ思った。


ゆっくりランチしながら、おしゃべりは止まることなくて。


ほぼ田辺さんが話していたけど、私は聞いていてとても心地よかった。



車に戻って、すぐに発車するかと思ったら、田辺さんは動かない。


「どうしたの?」


沈黙に耐えかねて聞くと、ものすごく意外な言葉がふってきた。



「俺、頭ではダメだってわかってんだけどさ・・・ミキが好きだ」



・・・まさか。


私には夫がいるって、知っているのに。


何も言えずに黙っていると、


「本当は今すぐ奪い去りたいくらいだけど、ミキの気持ちがあるし。


今すぐ俺のこと好きになれとは言わないから、これからも俺とふたりだけの時間を作ってほしいんだ」



・・・どうしよう。


でもこれって、不倫ってことだよね。


もし仮に田辺さんを好きになってしまったとしても、つきあうなら諒と別れてからじゃないと、誰からも責められることになってしまう。


だけど、好きっていう気持ちがおさえられなくなってしまったら。


諒よりも、田辺さんと一緒にいたいって思ってしまったら。


いったい、どうすればいいんだろう。


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