せめて、もう一度だけ
刻んでゆく
金曜日は、諒の帰りを待たずに眠ってしまった。


昼間の緊張がとけて、どっと疲れが出てしまったようだった。


土日は諒も休みだから、アラームをセットしないことにしている。


土曜日の朝に目覚めたら、珍しく諒が先に起きてコーヒー飲んでた。


寝坊した、って言っても8時だったけど。



「おはよう諒、ごめんね寝坊しちゃって。


すぐ朝ごはん準備するから」


「いいよ別に、ゆっくりで。


やっぱり、慣れないパートだから、疲れたんだろ」


「そうかも」



諒の知らない人と会っていたから疲れたなんて、言えない。


洗濯機をまわしている間に、簡単な朝食を作る。


ふたりとも、ほぼ無言で食べ終わる。


昨日は、楽しくおしゃべりしながら食事したのにな。


無意識に、諒と田辺さんを比べてしまう。


もしかしたら、田辺さんとこのままつきあったとしても、4年後には会話がないのかもしれない。


でも、諒と田辺さんは、根本的に性格が違う気がする。





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