せめて、もう一度だけ
「ごめん、私ズルいんだ。


夫とは別れずに、遼くんと一緒にいたいって思ってる。


でもこれは、誰に言っても許されないことだから、やめるなら今だって、わかってる。


わかってるけど、けどね・・・夫より遼くんが、好きなんだ」


遼くんは私を、ギュッときつく抱きしめた。


「ミキの今の言葉聞けただけで、俺は満足」


「でもね、このままだと遼くんを傷つけるばっかりだから」


「それでも、俺はミキのそばにいたい。


ただそれだけ」




好きになるのに、理由があるわけじゃない。


理屈なんてなくて、気づいたら姿を目で追ってしまうとか、ふとした時に相手のことを思い出すとか。


手をつないだぬくもり、抱きあった時のにおい、キスの感触。


もう一度、何度でも、感じたい。



だから私は、ありったけの『好き』をこめて。


私から、遼くんにキスをした。










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