せめて、もう一度だけ
その日、始業前の休憩室で、諒が出張で留守になることを遼くんに告げた。


「ミキと朝までいられるってこと?」


「そうだよ」


「すげーうれしい」


遼くんは、私をギュッと抱きしめた。


「ちょっと、遼くん、誰かに見られたら・・・」


「見られても平気だし」


「平気じゃないよ」


「ミキ、やっぱ鈍いな。


俺たちのこと、けっこうみんな気づいてるけど」


「えーっ?」


ぜんぜん気づかなかった。


「な、な、なんでみんな知ってるの?」


「ミキ、『な』が多すぎ」


「だって、なんにも知らなかった」


「会社でけっこう話してたし」


「そうだったかな・・・」


「ま、俺は同僚にオープンだったし」


「そんな・・・」


「隠し事、苦手だから。


話せるくらい、俺は真剣だってこと」









< 56 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop