せめて、もう一度だけ
木曜日の朝。


お泊まりセットを入れたバッグを持って、少し離れた駅に向かった。


大きなターミナル駅だと誰かに見られるかもしれないから、乗り換え路線がなくて各停しかとまらない駅のロータリーで待ち合わせた。


「ミキ、おはよ」


「おはよう、遼くん」


青いスポーツカーからおりてきた遼くんは、Tシャツにオレンジのハーフパンツで、普段とはまた違ってかっこよくて、ドキドキした。


私が着てるノースリーブのワンピースを見て、


「ワンピースめっちゃ似合ってる」


笑って助手席のドアを開けてくれた遼くん。


これからのドライブが最高の思い出になる予感がしたんだ。



遠くに行けば行くほど、知り合いのいない開放感からか、お互い大胆になっていく。


途中で休憩するたびに、車の中でキスをして。


歩くときは、手をつないで。


ベンチに座った時は、遼くんが私の腰に手をまわすから、密着して恥ずかしくて、でも嬉しくて。


ほうとう食べたり、ソフトクリーム食べたり、富士山みたり、写真撮ったりしたのも楽しかったけど。


相手の全部を求める気持ちが高まりすぎて。


買い物して遼くんのアパートに着いてすぐ、片づけもそこそこに甘いキスをたくさんした。


ベッドに押し倒されて、


「ミキ、もう離さない」


遼くんは私を激しく抱きよせた。


私は遼くんにこたえて、いつもより大胆になった。












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