せめて、もう一度だけ
「なんかあった?」


「ううん、なんにも」


「俺をみくびるなよ、聞きたいことがあるって顔に出てるし。


隠し事するなって、言ったろ?」



頭の中で、いろんな考えがグルグルまわっていたけど。


「元カノが事務員さんだったって、ほんと?」


かすれた声で、つぶやいた。


遼くんは私の髪をなでながら、


「誰かに聞いた?


確かに、元カノが事務員さんだった。


だけど、円満に別れたし、もう1年近く前の話だから」


「そっか、わかった」


ホッとした気持ちと、罪悪感でいっぱいだった。



夕食を一緒に作って食べて、一緒にお風呂に入って。


テレビみて笑って、映画をみて少し泣いて。


新婚生活を疑似体験してるみたいで、本当に楽しかった。


ひとつのベッドで眠る時も。


お互い自然と裸になって、求めあった。


吐息がまざりあって、体も気持ちもひとつになった。


心地よい快感にひたりながらまどろんで、いつのまにかふたりとも眠っていた。




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