せめて、もう一度だけ
その日、家に着いて夕飯の仕度をしていると、諒が帰ってきた。


「ただいま。


美希子、だいじょうぶか?」


「平気だよ、病人じゃないんだし」


「そうだけどさ、体調悪かったんだし」


簡単なサラダうどんを作って、テーブルに並べた。



妊娠がわかってから、諒は饒舌になった。


食べながら、今日あった出来事を話している。


だけど私は、うわの空で聞いているから、話の内容が頭に入ってこない。


諒は、遼くんと会って話を聞いてくれるんだろうか。


どうやって切り出したらいいんだろう。



「美希子、聞いてる?」


「えっ、あっごめん、ボーッとしてて」


「なんかあった?」


あったけど、言えるわけない。


「別にないけど」


「そ、ならいいけど」


ほんとは、ちっとも良くない。


赤ちゃんはどんどん大きくなっていくし、早く結論を出さなきゃいけない。



「あのね、会って欲しい人がいる」


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