せめて、もう一度だけ
目を開けると、私をのぞきこんでいる遼くんがいた。


「あれ、私・・・」


「大丈夫か?」


「ここ、どこ?」


「病院だよ、ミキ貧血で倒れたんだ。


起きたら、もう家に帰っていいってさ」


窓の外を見たら、陽がだいぶ傾いていた。


壁の時計を見ると、もうすぐ16時。


「あの、私ね・・・」


「帰るぞ」


「はい」


有無を言わせない雰囲気で、拒否できなかった。



青い車に乗ってしばらく走っていたけど、駅に向かうと思ったらまるで逆方向で。


車が停まったのは、遼くんのアパートの駐車場だった。


「あれ・・・」


「何してんだよ、早く降りろ」


言われるままに、黙って降りた。



部屋に入っても、ふたりとも黙ったまま時間が過ぎていった。


想い続けた遼くんが目の前にいるのに。


何て話しかけたらいいのか、わからなかった。








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