せめて、もう一度だけ
「やっと、いつものミキに戻ったな」


ニヤッと笑いながら、遼くんは満足そう。


その時ふと、今まで言っていなかったことを思い出した。


「遼くん、実はね・・・私の夫も『りょう』っていうの。


ごんべんに京都の京で、『りょう』って読むんだ。


今まで何となく言えなくて」


「ふーん、で、ダンナのことは何て呼んでんの」


不機嫌な顔で遼くんは問い詰める。


「あの・・・『りょう』って呼んでる」


「じゃあ、もうダンナのことは『りょう』って呼ぶなよ」


「はい」


その瞬間、じゃあ諒のことは何で呼べばいいんだろう?って考えてしまった。


遼くんは私のおでこをデコピンしながら、


「冗談だよ、ミキが決めてくれればいいから」


って言ってくれたけど、本当は少し気にしてるんだと思う。



それから、諒に黙って出てきたことを話したら、


「いま電話して、状況を説明しろよ。


俺がそばにいるから」


そっと手をつないでくれた。



< 99 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop