ビター・アンド・スイート
第1章 憂うつな朝。

29歳の再出発。

先週離婚届を区役所に提出し、私は旧姓に戻った。
三吉 葉月(みよし はづき)29歳 。
アラサーです。


先週まで夫だった男は文房具の会社の2歳年上の営業マン、
私は彼のグループの担当の事務だった。
26歳で結婚し、専業主婦になったが子供には恵まれなかった。
不妊治療を考え始めていた矢先、
夫の浮気相手が妊娠したのだ。
やれやれ。
数々の修羅場の後、私は身を引くことにした。
夫や、夫の両親は私に手をついて謝ってくれたけど、
妊娠した息子の子供を手放すつもりはなかった様子だ。
まあ、そうだろう。

私の両親は、子供を持てなかった私を不憫に思ったらしく、
家に戻るように何度も説得してきた。
もう、お嫁には行かなくっていい。って
ずーっと、一緒に暮らせばいいって。

悔しくて涙が出た。
オンナは子供を持って一人前。
そう、言われた気がした。

子どもは授かり物。
そう、私は信じている。
授からなくても
私は一人前のオンナだ。
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