ビター・アンド・スイート
第2章 始まりの朝。

老舗和菓子屋。

朝、早く起きて仕事に行く。
新人は1番に出社して、掃除をする。っていうのが普通な気がする。
グレーの制服にに着替えて、床を拭き、ショーケースを磨く。
カウンターの中を整理整頓し、赤いエプロンと三角巾をつけていると

「オハヨー、出戻りのハヅキちゃん」と店の前に
gâteau kazamaの店長が爽やかな笑顔を見せる。
口は悪いが、顔は悪くない。

私は機嫌の悪い顔をして、
「おはようございます。」と頭を下げる。
「新人さんは早く来るんだ。」とくすんと笑う。
「世の中の決まりごとです。」と返事をすると、
「老舗の和菓子屋は窮屈だな。」と笑って、
「うちの店にそんな決まりがあったら、バイトはみんな辞めていく。」と顔をしかめる。
「私は、バイトではないので。」と言うと、
「ふうん。」と笑って店に入って行った。

なんだあいつ。
朝から嫌な奴に会ってしまった。
機嫌の悪い顔になってしまったところに、
店長の石橋さんがやって来た。ちょっと驚いて、
「何か嫌なことでもあったんですか?」と聞かれてしまう。マズイ。
「いいえ。」と笑顔を作ると、
通路を隔てた向こうで、あの男のクスクス笑う声がした。

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