ビター・アンド・スイート

私が三吉屋にいると、常連さんはハヅキちゃんは元気かと必ず聞いてくる。
仕方ない。ハヅキちゃんは仕事の時はきちんとして見えるから、
みんなに一目置かれる存在にすぐになってしまうのだ。
真面目で綺麗で面倒見も良い。
そんなハヅキちゃんと、ずーっと比べれれる私は
ハヅキちゃんと違う路線を行くしかなかった。
明るく、元気で、可愛らしいを目指したのだ。
まあ、大体成功かな。
オトコはわかりやすいフワフワした女の子が好きだ。
本当の中身はあまり問題じゃない。
ハヅキちゃんより私の中身はしっかり者だ。って事は家族だけが知っているって事かな。


今日も三吉屋で明るい声を出すと
「いつも元気でいいね。」と店長の石橋さんが薄く笑う。
きっと、何にも考えていないお気楽な女の子に見えるんだろう。
「だって、元気なんだもん。」とニコニコしてやると、
クスクス笑って事務室に入っていく。
コイツもハヅキちゃんの明らかなファンだ。
ハヅキちゃんがたまに顔を出すと、緊張しているのがわかる。
（私といるときはのんびりした顔をしている。）
結構ハヅキちゃんの近くにいたはずなのに、
何もできずにハヅキちゃんをさらわれてしまったって事で、
きっと、落ち込んでいるんだろうって予測ができる。
ただ、和菓子の知識だけは職人さん並みなので
利用価値はあるかな。
と事務室を振り返ってみる。
ひょろりとした長身は180センチくらい。
私は155センチしかないから頭ひとつ違うから、
メガネに隠れた表情はあまりよくわからないけれど、
私がオロオロしていると、事務室から慌てて出てくるので
まあ、許してやる。って感じだ。