ビター・アンド・スイート
この間居酒屋で飲んだ時は
結局夏のディスプレイについては話すのは忘れてしまっていたので、
週末にもう一度話し合う事にした。
まあ、仕事を口実にしたデートの誘いって言うのは了解済みだ。
きっと、ハヅキちゃんだったら、気がつかないに違いないけど…

今日はイシバシのオススメのイタリアン。
港の夜景が綺麗なオシャレな店だ。
「こんなところにも来るんだ。」と一応感心してやると、
「デートのの時に使った事がある。」とシレッとぬかすので、
「ねえ、他のオンナと来たってなんでいう訳?」と機嫌の悪い声を出すと、
「30歳にもなって、デートもした事ないオトコって気持ち悪いじゃん。
ここは石窯のピザが上手いんだよ。」と私に笑いかける。
「また、他のオンナとデートに来るの?」と聞くと、
「えーと、ヤヨイちゃんに振られなければ、他のオンナとは来ないよ。」と言うので、
「他にオンナはいない?」と聞くと、
「和菓子オタクを好きになってくれる女の子はいない。」と言うので、
ちょっと安心しておく。
まあ、私も和菓子屋の娘じゃなければ、論外だったかな。
イシバシは和菓子の話になると、話が長くなる。
私は勉強になるし、和菓子が長い歴史の中でどんな風に変わっていったのかって
興味を持ってきたので、飽きずに聞く事ができる。
イシバシは和菓子屋の仕事は趣味と実益を兼ねた天職だ。
ヤヨイちゃんが和菓子に興味持ってくれて嬉しい。と私に微笑みかける。
ワインに少し酔った私は
なぜか楽しそうに話し続けるイシバシがいいオトコに見えてしまう。
結構綺麗な瞳で真っ直ぐ私を見つめてくるのも好ましく思える。
不思議だ。




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