ビター・アンド・スイート
「新作の試食販売ですか?」と石橋さんは私の顔を見る。
「えーと、ダメですか?」と私が見上げると、うーん。と石橋さんは考え込む。
確かに、デパ地下で和菓子店は試食販売をするっていう、習慣はないかな。
「誰にでも、試食をお願いするっていう事ではなくって、
来てくださったお客様にこんなものも、ありますって。
ほら、このお饅頭なんかアンが3層になってるけど、
置いてあるだけじゃ、わからないでしょ。」とちょっとチカラを込めて言ってみる。
「うーん。そう言われればそうだねえ。
俺たちは食べたりするから、味はわかってるけど、
試食っていいかもねえ。ウミノさんに聞いてみる。」と私の顔を見て笑った。

私は少しホッとして、顔を緩める。
「ハヅキさん、そういう笑顔、お客様にも見せてよ。
ちょっと近寄りがたい硬い感じがするから。」と石橋さんは私を見る。
「人前に立つのは緊張して。」と言うと、
「もう直ぐ2ヶ月経つから、慣れてほしいかな。」と人懐っこい笑顔を見せた。

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