ビター・アンド・スイート
6月に入った。
外は暑いけど、デパ地下は寒いくらいだ。季節感がない。
和菓子って季節感が大事なんだけど…と思う。
可愛い仔犬とすれ違いながらちょっと目を留め、通勤まえに先を急ぐ。
ヒトの足を止める。
可愛いモノ。
目新しいもの。
珍しいもの。と考えながら歩く。
「石橋さん、私、着物を着て販売しては駄目でしょうか?」と店長の顔を覗く。
「着物?」
「午前中は制服を着て、掃除や、品出しを終えてから、午後に着替えるわけにはいきませんか?
涼しげな一単(ひとえ)の着物なら、そう、大袈裟にならないって思うんですけど…」と聞くと、
「着物自分で着れるんだ。なるほどね。
やっぱり、お嬢さんって感じだねー。」とちょっと感心して、
「いいね。着物。」とにっこりした。
フロアマネージャーの工藤さんに、着物が着られる場所を借りれないかと相談に行くと、
「着物か。良いですね。着物売り場の裏の控え室に頼んでおきますよ。」
とその場で連絡してくれて、許可が出た。
「僕も楽しみですよ。ハヅキさんの着物。」と、工藤さんが私の顔を見る。
「ありがとうございました。」と顔を赤くして、フロアマネージャーの部屋を出ると、
シロタさんが廊下の壁にもたれて機嫌の悪い顔をしている。
うん?
待ち伏せですか?と顔を睨んでちょっと立ち止まる
「ハヅキ、ああいうのが好み?」と私を見下ろす。
「何言ってるの?!仕事の話をしただけだし。」と通り過ぎようとすると、
「顔が赤い。気に入らねえ。」と後ろをついて来る。
「ばっかじゃないの?子どもみたい。」
と私が振り向いて、怒った顔を見せると、
急に荷物の影に私を連れ込み、
「言い訳するな。」と私の左の手首内側にギュっと唇を押し当てて吸いついた。
唇が熱い。
この男は何をしたいんだ?
「吸血鬼。」と手を振りほどくと、案の定、手首にキスマークが付いている。
「吸血鬼は首に噛み付くんだろ。」と笑った声を出す。
「この、変態。」と言うと、
「変態より、吸血鬼にしとく。次は首に噛み付いてやる。」とクスクス笑っていなくなった。
私は1人になるとポカンとしてしまう。
あいつのあの態度は何なんだ。
私は深呼吸してから、三吉屋に戻る事にした。
外は暑いけど、デパ地下は寒いくらいだ。季節感がない。
和菓子って季節感が大事なんだけど…と思う。
可愛い仔犬とすれ違いながらちょっと目を留め、通勤まえに先を急ぐ。
ヒトの足を止める。
可愛いモノ。
目新しいもの。
珍しいもの。と考えながら歩く。
「石橋さん、私、着物を着て販売しては駄目でしょうか?」と店長の顔を覗く。
「着物?」
「午前中は制服を着て、掃除や、品出しを終えてから、午後に着替えるわけにはいきませんか?
涼しげな一単(ひとえ)の着物なら、そう、大袈裟にならないって思うんですけど…」と聞くと、
「着物自分で着れるんだ。なるほどね。
やっぱり、お嬢さんって感じだねー。」とちょっと感心して、
「いいね。着物。」とにっこりした。
フロアマネージャーの工藤さんに、着物が着られる場所を借りれないかと相談に行くと、
「着物か。良いですね。着物売り場の裏の控え室に頼んでおきますよ。」
とその場で連絡してくれて、許可が出た。
「僕も楽しみですよ。ハヅキさんの着物。」と、工藤さんが私の顔を見る。
「ありがとうございました。」と顔を赤くして、フロアマネージャーの部屋を出ると、
シロタさんが廊下の壁にもたれて機嫌の悪い顔をしている。
うん?
待ち伏せですか?と顔を睨んでちょっと立ち止まる
「ハヅキ、ああいうのが好み?」と私を見下ろす。
「何言ってるの?!仕事の話をしただけだし。」と通り過ぎようとすると、
「顔が赤い。気に入らねえ。」と後ろをついて来る。
「ばっかじゃないの?子どもみたい。」
と私が振り向いて、怒った顔を見せると、
急に荷物の影に私を連れ込み、
「言い訳するな。」と私の左の手首内側にギュっと唇を押し当てて吸いついた。
唇が熱い。
この男は何をしたいんだ?
「吸血鬼。」と手を振りほどくと、案の定、手首にキスマークが付いている。
「吸血鬼は首に噛み付くんだろ。」と笑った声を出す。
「この、変態。」と言うと、
「変態より、吸血鬼にしとく。次は首に噛み付いてやる。」とクスクス笑っていなくなった。
私は1人になるとポカンとしてしまう。
あいつのあの態度は何なんだ。
私は深呼吸してから、三吉屋に戻る事にした。