ビター・アンド・スイート
「こんなところで、どうしたんですか?」
とシロタさんを見上げると、急にしゃがみ込んでマメの顔を見る。
「おまえ、名前なんつーの?」とワシワシとマメを撫でる。
マメは嬉しそうにシロタさんにじゃれついている。
「リョウ、犬は名乗らないって思うけど。」と呆れた声を出したオトコは
この人も細身で背が高い。茶色の短髪。切れ長の瞳をスタイリッシュな眼鏡で隠している。
腕を組んで機嫌の悪い顔。
知ってる…。
眉間にしわ。
「風間 颯太さん?」と私が驚いた顔を見せると、
「おまえって有名人だな。」とシロタさんが立ち上がって笑った。
「あ。だって、店に写真が飾ってある。」と私がちょっと慌てると、
「ふうん。」とカザマさんは私を見て、
「リョウ、紹介して。」と少し笑った。
「デパ地下のうちの目の前の店にいる三吉屋の出戻りお嬢さん。
三吉 葉月さん。こっちは?」とシロタさんはマメを見るので
「柴犬。7歳の雄のマメです。」と言うと、
「豆柴?」と聞くので、
「普通の柴犬です。うちの犬はずっと、マメって言う名前なの。」
と言うと、また、しゃがみ込み、
「ヨロシク、マメ。」と言って、ひっくり返って愛情を示す、マメのお腹を撫でている。
やれやれ。
マメのヤツ、攻略されるの早すぎだって。
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