ビター・アンド・スイート
「どうしたんですか?」と歩きながら、もう一度聞くと、
「この間、ハヅキと話してる時、新しい店舗を山下公園前に出すといいかなって思いついて。
颯太を連れ出したんだ。」
とシロタさんは私に笑いかけた。手にはマメのリードが握られている。
マメは嬉しそうに振り返りながら前を歩いている。
すっかり仲良しだ。
「いい場所だけど、高そうだよねえ。」と風間さんが私の顔を覗く。
「ハヅキの家ってここら辺じゃ、老舗で顔が効くでしょ。
知ってる不動産屋紹介してくれない?」と私の顔を覗く。
私はちょっと考える。まあ、おじいちゃんに頼めば、きっと紹介できるって思うけど、
こいつら、信用出来るのかって聞かれそうだ。
「おじいちゃんが知ってる不動産屋さんは紹介できるだろうけど、
あなたたちを信用できるのかって聞かれそうだなあ。」と正直に言うと、
「まあ、そうだよね。」とふたりはうーんと考え込む。
「おじいちゃんって和菓子職人でしょ。
颯太、『美咲』を食べてもらってみたら。」とシロタさんは風間さんの顔を見る。
「俺たちはこういうものを作っている者です。
洋菓子に情熱をかけて仕事をしています。ってさ。」
とシロタさんは言うと、風間さんが
「やってみる価値はあるかな。」とうなずいた。
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