ビター・アンド・スイート
「善は急げだ。」とシロタさんが私の手を掴む。
「ど、どこに行くの?」と聞くと、
「勿論、gâteau kazama本店。ハヅキも食べたいって言ってたでしょ。」と足早に歩く。
いや、ちょっと待って、
「散歩に行くって出てきただけだし、マメもいる。」と慌てて言うと、
「俺たち、車だし、あの店、テラスあるし、マメも大丈夫。」と振りかえる、
「スマホしか持ってないし、マメがウンチしたらどうするの?」と言うと、
「ハヅキちゃん、諦めて。こういう時のリョウは止められないんだ。」
と風間さんが後ろを急ぎ足でついて来て、笑い声を立てた。

外国製の大型のSUV車の後ろに乗せられ、マメを抱きしめ車に揺られる。
どうしてこんな事になっているんだろう。
謎だ。
やっぱりこいつは迷惑な男だ。
仕方なく、散歩の途中で友達にあったので遅くなる。と家に電話を入れた。
嘘はついていない。
通話を切ると、
「俺たちって、友達ぃ?」とシロタさんは運転しながら私に聞く。
「不本意ながら。」と顔をしかめて言い返すと、
「この人、手強そうだねえ。」と風間さんが助手席で笑った。
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