ビター・アンド・スイート

車の中で、おじいちゃんに
「仕事のことで、紹介したい人がいる。」
と電話すると、怪訝な声を出したけど、了承してくれた。

もう、私に出来ることはケーキを食べさせることだけだ。
後は事は任せて大丈夫。そう思った。


「あのさ〜、ハヅキ、あの、いけ好かないフロアマネージャーとはどうなってるの？」
とシロタさんは車の運転しながら聞く。
風間夫妻が面白そうに私をみる。
「シロタさんには関係ないって思いますけど。」と言うと、
「ハヅキちゃん、教えてやって。」と風間さんが笑う。
「…お食事に誘われたところです。」と機嫌の悪い声で言うと、
「うん？そんな程度か。」とシロタさんはちょっと笑った。
「あとさあ、いつ離婚したの？」と聞く。
「去年の11月。」と言うと、
「じゃあ、もういいかなあ？」と言うので、
「何が？」と聞くと、
「もう、本気で迫ってもいいかなあって思って。
ライバルも出てきちゃったし。」と笑った声で言う。

はい？
何言ってるの？

「そう言われても、困ります。」と言うと、
「フロアマネージャーはいいのかよ。」というので、
「お付き合いをして欲しいって、言われてません。」と言うと、
「おまえって馬鹿？」と不機嫌な声を出す。
「馬鹿って何ですか？」と怒ると、
「馬鹿は馬鹿だろ。」と言い返してくる。

私は黙り込んで窓の外を見る。
あいつも黙ったままだ。

「あーあー。コレってどうよ。」と助手席の風間さんが美咲さんを振りかえる。
「かなり重症。」と美咲さんが笑った。