ビター・アンド・スイート
自分の部屋で、荷物を解いていると、
「おかえりい、ハヅキちゃん。」と寝ぼけた顔でヤヨイが顔を出す。
「こんな時間になんでいるの?」と私は驚いた声を出す。
今は平日の午後3時だ。
「うーん。二日酔いで休んじゃったあ。」とニヤニヤ笑う。
コネでお気楽な近所の会計事務所に勤めているヤヨイは
けっこう、合コンなどにいそしんで、
養ってくれる結婚相手を探しているらしい。
「昨日の婚活パーティーが、不作でさあ、
婚活仲間と一緒にカラオケ行ってえ、
気がついたら、終電なくってえ、
始発で帰ってきて、寝ちゃった。
仕事先には風邪で熱があるって言ったら、
声、枯れてるよ、お大事に。って言われちゃったあ。」
と私のベットに座り込んだ。
おいおい、一応、社会人でしょ。
「合コンしないで、ちゃんと働きな。」と呆れて見ると、
「合コンは卒業した。婚活だしい。」と顔をしかめてみせる。
小柄でキュートな妹はそんな表情も似合う。
いつまでも子どもなんだから。とにっこりすると、
「ハヅキちゃん、おかえり。」ともう一度言って、私に抱きついた。
胸がきゅっと痛い。


「ハヅキちゃん、太った?」とお腹を摘む。
こら、姉のお腹の肉を摘むな。
きっと、彼女なりのジョークだ。
今回の騒ぎで私は体重を落とした。
160センチ、50キロ。前より3キロ減っている。
ショートボブの黒髪。少し顎のラインが細くなったかな?
「太ってない。」と機嫌の悪い声で睨むと、
「アラサーって、お腹に肉がつくんだねえ。」と感心したように部屋を出て行く。
このオンナ、離婚した姉にも容赦がない。
「よけーなお世話だ。」と後ろ姿に悪態をついた。

三吉 葉月 29歳 出戻ってまいりました。
そう心の中でつぶやいた。
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