ビター・アンド・スイート
家に戻ると、ヤヨイとお母さんが『美咲』以外にもいただいたケーキを取り分けたところだった。
「あーもう、そのチョコレートケーキ食べたかったのに。」と私が声を上げると、
「だってハヅキちゃん、シロタさんといい雰囲気だったし、
帰ってこないのかなって思った。」とヤヨイはニヤニヤ笑う。
私は顔が真っ赤になる。

コイツ、どこまで見てたんだ?

お母さんが、
「へー、そうなの?お付き合いはしてないって言ってたのに?」
と笑いながら、私の顔を見るので、
「お付き合いはしていません。‥これから考えるの。」
とヤヨイの食べているケーキをフォークでひとくち食べようと手を伸ばすと、
「シロタさんってすごくかっこいいねえ。背も高いし。」と私からケーキのお皿を遠ざける。
「もお!食べてもいいでしょ。」と、ヤヨイを睨むと、
「家の近くで、どんな事になってたかお父さんに言おうかなあ。」と私の顔を覗くので、
「…それは止めて。」とヤヨイにケーキを譲ると、
ヤヨイはケーキをもって、階段を上がっていった。
きっと、自分の部屋でゆっくり食べるつもりだろう。
風間さんが自信作と言ったケーキを食べたかったのに。
また、買ってこなければ。

やれやれ。


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