ビター・アンド・スイート
「そう言えば、不動産屋さんって、紹介してもらったの?」
と手を握られたまま、聞くと、
「紹介してもらった。すごく助かったよ。
今日、候補の場所も見せてもらった。」
と機嫌の良い声で言って、
コインパーキングに止めてあった車に私を乗せた。

「でもさー。賃料高いんだよなあ。
デパ地下の店舗、いくつかたたむかなあ。」とちょっと、笑って、
「夕飯、パエリヤでいいかな。俺、美味い店、知ってるんだ。」と私の顔を見る。
私がうなづくと、嬉しそうに口笛を吹きながら車を発進させた。

何が食べたいかと聞くオトコと、
自分の美味しいと思うものを食べさせたいオトコ。

違いはあるけど、私は今シロタさんの好きな事が知りたいと思っている。
きっと、それは、もう、彼のことが好きになっているってことなのかもしれない。
そう思って、彼の機嫌の良い横顔を見た。

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