ビター・アンド・スイート

陽の当たる部屋。

翌日からも、
工藤さんは時折、午後に顔を出し、私の着物姿を褒めてくれたりする。
オトナだ。
私がシロタさんにそう言うと、
「諦めが悪いやつだ。」と機嫌の悪い顔をみせる。私が
「オトナゲない」と言ったら案の定、口喧嘩になった。


水曜日、
帰りにコーヒーショップで待ち合わせて、
シロタさんの部屋に行く。
「あんまり綺麗って訳じゃないけど、座るところもあるし、コーヒーも飲める。」と笑う。
「いきなり、襲ったりとか?」と聞くと、
「うーん。いきなり、は止める。」とクスクス笑う。
食事はデパ地下でお惣菜を買った。
慣れた恋人みたいに、キッチンを使うのは
恥ずかしいって思ったからだ。

親にはなんて言ったらいいかわからなかったので、
ヤヨイにシロタさんの家に行ってくる。
と言っておいた。
まあ、やんわり伝えてくれている事を望む。って感じだ。

シロタさんは、
「僕の部屋に招待させていただきます。」
と大きく笑顔を見せ、車に乗る前に手を出す。
私はちょっと、息を吐いてから、
シロタさんの手に自分の手を重ねる。
シロタさんはぎゅっと握ってくる。

好きになれそうな大きな手だ。
そう思いながら、助手席に収まった。
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