ビター・アンド・スイート
シロタさんの部屋は江ノ島に近いマンションだった。
古いマンションだけど、その分立地が良くて、海が見える。
とニコリとした。
行きは道が混んでるから海沿いの道を使わないけど、
明日の帰りは海沿いのを通ろうとか、
緊張して、黙りがちの私を気遣って楽しげに話しかけてくれる。
「無理に抱いたりしないって。」と笑って言うので、
「緊張してるだけ。」と言うと、
「俺も家に女のヒトが来るのは久しぶりで、緊張してる。」と小さなため息を吐いた。
ちょっと意外だ。
その気になれば、いくらでも、女の子はついてくるんじゃないかな。
「…そう?」と聞くと、
「俺は不器用なんだよ。
仕事忙しくて、オンナノコの事まで、気が回らない。
ハヅキはしょうがない。どんどん好きになっちゃったし。」
「しょうがないの?」と少し笑うと、
「そうだよ。」と機嫌の悪い声を出した。

地下の駐車場に車を止め、手をつなぎながら歩く。
シロタさんも緊張してるって思うと、
少し気が楽になった。かな。

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