ビター・アンド・スイート
次に目が覚めると、お昼に近い。
リョウは私の頭を自分の胸に置いたままタブレットを操作している。
「おはようございます。」と私が顔を覗くと、
「おはよう。腹減った。飯食べに行く?」と聞く。
「昨日、買ったヤツは?」と聞くと、
「昨日、ハヅキが寝てる間にちゃんと冷蔵庫にいれた。中身はナニ?」とニコリとする。
「サラダとハンバーグとフランスパン。」と言うと、
「完璧。コーヒーとオレンジジュースはある。」
と言って、タブレットを置き、私を立ち上がらせた。
「シャワー、一緒に浴びる?」と私の顔を覗くので、
そんな事をしてたら、朝ごはんも食べられなくなる。と思って、
「先に浴びてきて。ご飯用意する。」と顔をしかめると、
「はーい。」とクスクス笑って、バスルームに消えた。
持ってきていた部屋着に着替えて、キッチンに立つ。
綺麗に片付いてる。と言うか、
冷蔵庫の中にはビールと調味料しかない。から、料理をする習慣はなさそうか。
私が用意したお惣菜を温めることにする。
お皿はシンプルなホテル仕様の白い食器で揃えられている。
食器は白。家具はブラウン、家電はクロ、カーテンは薄いブルー。
きっと、綺麗好き。
と部屋の中を観察する。
飾られている物はない。シンプルな部屋だ。
ま、女の痕跡は消しているだろう。
とちょっと安心する。

「交代。」とリョウがバスルームからやって来る。
「洗濯してもいい?」と聞くと
「喜んで。」と居酒屋みたいな返事をする。
シーツにタオルケットに枕カバー。
とりあえず、洗濯機にいれ、シャワーを浴びる。
髪が傷むから、自分で持ってきたシャンプーとコンディショナーを使う。
髪を拭きながら、リビングに戻ると、リョウは私を捕まえ、髪の匂いを嗅ぐ。
「いつもの匂いだ。」と笑って抱きしめてから、食卓に座らせ、
「いただきます。」と私の顔を見ながら食事を始めた。

リョウは何度も食事の手を止めて私の顔を見ていて、
嬉しそうに笑いかけてくる。
恥ずかしい。
リョウさん。ちょっと見つめすぎです。
私は心の中でクレームをいれてみた。





< 52 / 131 >

この作品をシェア

pagetop