ビター・アンド・スイート
ピンポンとチャイムが鳴って、インターフォンを見ると、リョウだ。
「おかえりなさい。」と驚く。まだ午後の3時だ。
ドアを開けると、ぎゅっと抱きしめて、
「ただいま。お母さん達は?」と頬に唇を付ける。
いつもの挨拶。
「お邪魔しないように帰りますう。」とヤヨイがリビングで声を出す。
「送ります。」とリョウが慌てて言うと、
「いいの。まだ、3時過ぎだし、江ノ電乗りたいから。」と母は笑って、玄関にやって来た。
「ハヅキをお願いします。」と母は深々と頭を下げ、ヤヨイを連れて靴を履いている。
「プリン一緒に食べようと、持ってきたんですが。」
とリョウが呆気にとられて母の顔を見ると、ヤヨイが
「いただきい。」とプリンの入った箱を掴み取って、持って行ってしまう。
「また、遊びに来て。」と玄関を出て、私が言うと、
「ハイハイ。」と2人は手を振ってエレベーターに乗り込んだ。

「本当に帰っちゃったの?俺、頑張って帰ってきたんだけど。」
と靴を脱ぎながら私の顔を見るので、
「探検に満足したんでしょう。」と言うと、
「部屋、狭いって言ってなかった?
俺は誰とも暮らすつもりはなかったから。」と心配そうな顔をしたので、
「リゾート気分でいい部屋だって言ってましたよ。」と言うと、
「三吉屋さんのお嬢さんにはちょっと狭いかなって、
もっと広いマンションに買い直さなくってもいいかな?」と私の顔を覗くので、
「私はここが好きです。」と言うと、
「俺も気に入ってるんだ。」と笑顔を見せた。
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