ビター・アンド・スイート
「ハヅキちゃんは和菓子やの『三吉屋』」さんのお嬢さんだよ。」と颯太さんが言って、
「お嬢さんはやめて下さい。30歳で出戻りですし…」と声を出すと、
「『三吉屋』ってデパ地下の颯太の店の前にあるでしょう。
私、あそこの塩大福、大好きなのよ。赤エンドウの塩気が良いのよねえ。」
とトオルさんがにっこりしてくれる。
「ありがとうございます。」と微笑むと、トオルさんは、
「うーん、気が強い学級委員タイプって感じだけど、笑うと、幼い顔ね。
不良男子がやられるタイプ。
リョウくんストライクゾーンど真ん中って感じよねえ。」とリョウの顔を覗いて笑う。
「うるせー。」とリョウが笑って私を抱きよせる。
「だよなあ。
ふたりを見た時、リョウが嬉しそうにハヅキちゃんの顔ばっかり見てるから、
絶対惚れてるよなあって思ったし。」と颯太さんが声を出す。
「直ぐに突っかかって、怒らせるし。」と美咲さんもクスクス笑う。
「んまあ、小学生並み。」とトオルさんが笑い、カウンターにいた男性がビールを持ってくる。
「おまえら、黙ってろ。」とリョウが顔を赤くする。
「ちょっとお、キスマーク!」とトオルさんが私の首をじーっと見る、私が慌てて、首を抑えると、
「リョウくんは颯太と違って、手が早いんだ。」と笑って、
「うるせー。」
「うるせーよ。」とリョウと颯太さんが声を合わせて怒ったのが可笑しくて、
みんな声を出して笑い合って
「乾杯」とトオルさんが音頭を取ってグラスをあげた。


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