ビター・アンド・スイート
仕事の後、タイチ君の顔を見に行った夕飯後、
「ハヅキちゃん、リョウ君ってお休みないの?」と顔をしかめて私に聞く。
(私がリョウと呼ぶようになったので、ヤヨイもリョウ君と呼ぶようになった。
一応、兄よりも年上。ヤヨイより10歳も年上ですけどね。)
「うーん。新しいお店が落ち着くまで、お休みはなさそうだよねえ。
そうでなくても、12月は洋菓子店は忙しいし。」と言って、ちょっとため息を吐くと、
「誕生日プレゼントとか、婚約指輪とか、海外旅行とかは?」と聞くけど、
「そんな予定はないですよ。それに私の誕生日って8月でしょ。」と笑うと、
「リョウ君の誕生日は?」と聞くので、
「11月の終わりだけど、プレゼントを用意するくらいかなあ。
きっと、ゆっくりできなさそうでしょ。」と言うと、
「ハヅキちゃん、私と、温泉でも行く?」とヤヨイが聞くので、
「行きません。」と笑うと、
「…行きたいなあ。温泉。」とスズカさん笑ったので、
「スパ。は?3人で。駅前のヤツ。」とヤヨイが言って、
「タイチ君はお兄ちゃんとおばあちゃん達に任せて、半日コース」と私も笑いかける。
きっと、スズカさんは疲れているかな。
「…半日なんてきっと無理かも。」とちょっとスズカさんが肩を落とすので、
「何言ってんの?育児は家族一緒にするもんでしょ。」とヤヨイが怒った声を出して、
「私に任せて。」と足音を立てて、キッチンを出て行った。
「こーいうときのヤヨイは頼もしいね。」とスズカさんに私が笑いかけると
「姉妹っていいですね。」
とひとりっ子で育ったスズカさんは嬉しそうに笑った。
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