ビター・アンド・スイート
きっと、ヤヨイのメールを見たんだろう。
リョウから、直ぐに電話がある。
「ハヅキ、いいか。家から絶対出るな。電話にも出るなよ。
これから迎えに行くから待ってろ。」とキツく言われる。
「ヤヨイちゃんに代わって。」とリョウが言うので、ヤヨイにスマホを渡すと、ちょっと話して、
「わかってるから、大丈夫。」とヤヨイが言っているのをボンヤリ眺める。
…なんかオオゴトになちゃってる。電話があっただけなのに。とヤヨイをみると、
「ハヅキちゃん、押しに弱いから、そいつが三吉屋に来ても、
ひとりで会わせないで。ってリョウ君が言ってた。」とヤヨイが笑う。

…なんだ?押しに弱いって。
リョウったら、そう思ってたんだ。とちょっと笑える。
まあ、強引に親に挨拶しに来たり、家族と仲良くなってしまうオトコじゃなければ、
まだまだこんな風に婚約者って感じじゃなかったかもね。
とちょっと考えた。
好きになっても、片思いで満足。って状態が長いのが私の恋愛の特徴かもしれない。

前の夫も、結構、グイグイくる男だったな。
初めて会った頃、
何度断っても、気にせず、明るく口説いて来てたっけ。
「営業はあきらめないのが大切。」
と綺麗な歯並びを見せて笑った人懐っこい笑顔を
懐かしくちょっと苦く、思い出していた。



< 89 / 131 >

この作品をシェア

pagetop