キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「うそぉ…!安川、マジだったんだぁ!」
貰った箱を見せると、なべっちは目を丸くした。
「安川くんって…?」
「ほら。クリスマスの時、言ってたじゃない?彼氏の友達が合コンしたがってるーって。知枝里のこと可愛いって言ってたんだけどさー、あいつってイマイチ信用ならん外見じゃん?髪長めだしチャラいし」
最初、名前を呼ばれて振り返った時、確かにびっくりした。
あたしと釣り合うタイプには見えなかった。
そんな彼が赤い顔でこんなものを差し出してきた時には、何が起こったか分からなかった。
「ま、でも知枝里には安堂くんがいるからねー」
なべっちの、言葉が胸に突き刺さる。
「…………んだよ」
「え…?」
「実はね、もうフラれちゃったんだよ。あたし」
覚悟を決めて、なべっちに言った。
笑顔で、明るく。
「え…、うそ…!だって知枝里…っ」
「昼休みにー、渡そうとしてー、待ってたんだけど来なかったんだー。やっぱ無理だね!彼氏にしたい男No.1は、一般人のあたしじゃダメだね」
ホントは、嘘。
気まずくてあたしの方が屋上に行けなかった。
作ってきたお弁当も、鞄の中に入ったまま。
なぜだか今日は、安堂くんと向き合って、きちんと笑える自信がなかった。
「う、うそー…。知枝里、そんなぁ…」
なべっちの方が泣きそうになって、あたしの肩を摩った。
「や、だからね。安川くんの存在には救われるっていうか…。もちろん今すぐとか無理だけど、返事も急がなくていいって言ってもらったし…」
うんうん、となべっちは聞いてくれた。
放課後まであたしといると言い出したから、それは丁重にお断りした。
二人にとって、初めてのバレンタイン。
あたしの分まで、幸せな日にして欲しい。