キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
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朝、教室に入ると、小林がいつもと何だか違っていた。
気合いの入った髪。テカテカの唇。
何か頻りに首元を気にしてるし、今日はいつも以上に手鏡と睨めっこしてるし。
(……ああ、第一ボタンね)
シャツの第一ボタンを開けてた方が可愛くて、それだけで彼氏が出来るって思ってる。
……ほんと、バカな奴。
終了式の間も、頻りに手鏡を見つめていて、景山に怒られてた。
学校が終わって、教室を出た瞬間、色んな女子が後を尾けてきたのはすぐに分かった。
どうしてこんなボタンが欲しいのか分からない。
第一、学ランでもないのに。
俺は颯爽と、尾いてくる女たちは無視して、学生玄関を出た。
ふいに振り返ると、女達は立ち止まって、それぞれに話をしていたり、咲いている花を眺めていたり、口笛を吹いたりしていた。
「…バッ…!! こういう時は隠れちゃダメなのよっ!」
(―――――、)
後ろの方で、誰かが一人隠れようとしていた。
それは丸いお団子頭。
今朝、教室で違和感を感じたあの団子頭が木の影に隠れようとしていた。
「これって、だるまさんが転んだ的な!?」
その声が聞こえて、ふいに笑いそうになった。
確かに似てる。
俺が振り返ると、女子達がその場に立ち止まる。
思わず噴き出しそうになって、前を向いた。
それと同時に、キャー!! という爆音が響いて、ますます疲れが募った。
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