キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
「小林、なに飲む?」
「あ…あたしは何でも」
「コーヒーに牛乳いっぱい入れたらカフェオレになるかな?」
「……コーヒー牛乳になるんじゃない?」
「一緒じゃないの?」
「違うよっ」
語尾を強めたあたしに、安堂くんは笑っている。
(あ……)
学校ではなかなか見せない笑顔。
こんな一面を見れて、凄く嬉しい。
そういえば安堂くんは、右耳に1つだけ、ピアスを開けていた。
いつも鈍い銀色のピアスがはめられていて、もう色も鈍ってきている。
(あんまり執着とかなさそうだもんね)
それを見て、あたしはクスリと笑った。
「なに?」
そんなあたしにすかさず気付いて、安堂くんが言う。
「なんでもないよっ」と手を振ると、安堂くんはケーキの箱の中を見て、「あ。」と言った。
「ど、どうしたの!? まさかケーキ、倒れて…!?」
カウンター越しに、安堂くんの手元を覗き込んだ。
「小林、チョコケーキ2つ買ったの?」
安堂くんがフッと笑って、あたしを見た。
あ…、それは―――…。
「せっかくお邪魔するし、と思って、それ…安堂くんのお父さんに。お父さんは、甘いの、もしかして苦手かな?」
別に、お父さんに気に入られようとかそんなんじゃない。
ただ、せっかくお邪魔するなら…、って。
もごもごと指先で遊ぶと、安堂くんの表情がフッと曇った。
「…さぁ、どうかな。あの人の好み、よく知らないから」
「―――……っ」
安堂くんのその顔があまりに冷たくて、ビクッとした。
―――あの人。
なんて冷たい呼び方をするんだろう。
自分のことを言われたんじゃないのに、なぜだか泣きそうになった。