キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
お守りを握った拳で、まぶたを擦る。
「…そんなことできるわけないじゃん…!安堂くんに買ってもらったものなのに……っ、安堂くんのバカぁ……!」
うまく行かなくて駄々をこねる子どもみたいに、大きな口を開けて泣いた。
「めいっぱい、オシャレしてきたのに、可愛いって思って欲しくて恥ずかしかったけど短いスカートはいてきて、グロスも…、勝負下着も、この髪も全部全部安堂くんのためだったのに……っ、あたしばっかりが必死になって、焦ってただけだなんて…っ!こんなのヒド……」
「小林だけじゃないよ」
泣きじゃくるあたしの言葉を遮って、安堂くんが言った。
「焦ってたの、小林だけじゃないよ」
「………へ……っ」
「小林を見た瞬間からずっとドキドキしてたよ。だから焦ってたの、小林だけじゃないよ」
安堂くんは無表情のままに、でも少しだけ恥ずかしそうにそう言うと「ちっ」と顔を背けた。
「何だってそんな格好して男の家に来てんだよ。小林はそーゆーキャラじゃないだろ」
ぽろりと涙が頬を伝い、あたしは鼻水交じりの声で聞いた。
「……ナッチだったらよかったの…?」
「……はぁ?」
安堂くんの眉間に1本のしわが通る。
「だって…さっき、あたしとナッチは違うって…」
ヒクヒクとそう言うと、安堂くんはますます嫌そうな顔であたしを見つめた。
「何をどう聞いてたら…」
「じゃああたしは、どうやったら安堂くんに好きって思ってもらえるの!?」
感極まって、わっと泣いた。
手のひらに顔を埋めると、ふわっと頭を撫でられた。
「……!」
そしてそのまま胸元に、優しく抱き寄せられる。
「……その気持ちも、小林だけじゃ、ないよ」
頭の上から、長いため息が落ちてきて、あたしは再び目を開けた。
「う、うそだ…っ!」
咄嗟に顔を上げた。
至近距離。
見つめ合ってドキッとする。
「ほんとだよ。…なんでうそなの?」
「だ、だって安堂くん、全然全然そんな素振りなんて…っ」